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研究職の「35歳の壁」は本当か? スペシャリストかマネジメントか、決断のタイミング

2025.12.01

研究職として働く皆さんは、「35歳の壁」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。技術者や研究者のキャリアにおいて、35歳前後が重要な分岐点になるという考え方です。この年齢を境に、専門性を極めるスペシャリストとして進むか、チームをまとめるマネジメントへ転向するか——多くの研究職が直面する悩みについて、現実と向き合い、最適な選択をするためのヒントをお届けします。

「35歳の壁」は本当に存在するのか?

結論から言えば、「35歳の壁」は組織や業界によって存在する場合もあるが、絶対的なものではないというのが実情です。

なぜ35歳が節目とされるのか

この「35歳の壁」という概念が生まれた背景には、いくつかの理由があります。

1. 組織の人事制度の影響 多くの日本企業では、30代半ばが主任や係長クラスへの昇進時期と重なります。この段階で、管理職候補としての適性が評価され、マネジメント職への道が開かれる一方で、専門職として残る選択肢も示されます。

2. 体力と学習能力のバランス 研究職は長時間の実験や集中力を要する業務が多く、20代の体力と学習スピードが徐々に変化してくる時期でもあります。ただし、これは経験値と効率性でカバーできる部分も大きいのです。

3. 市場価値の変化 転職市場において、35歳前後は「即戦力としての専門性」と「マネジメント経験」の両方が求められ始める年齢です。どちらかの強みを明確に持っていないと、キャリアの選択肢が狭まる可能性があります。

変化する時代背景

しかし、近年の働き方や価値観の多様化により、この「壁」は徐々に低くなっています。

  • 専門職制度の充実:多くの企業が、マネジメント職と並行して専門職(スペシャリスト)のキャリアパスを整備
  • 年齢にとらわれない評価:実力主義の浸透により、40代、50代でも高い専門性を持つ人材が活躍
  • リスキリングの普及:新しい技術や知識を学び直す環境が整い、年齢に関係なくスキルアップが可能

スペシャリストかマネジメントか:それぞれの特徴

スペシャリストの道

特徴

  • 自分の専門分野を深く追求し、技術や知識のエキスパートとして活躍
  • 研究開発、技術顧問、コンサルタントなど、専門性を活かした役割
  • 成果が論文、特許、製品開発などで明確に評価される

向いている人

  • 技術そのものが好きで、探究心が強い
  • 一つのことに深く没頭できる集中力がある
  • 最新技術や研究動向を追い続けることに喜びを感じる
  • 人を管理するよりも、自分の手を動かして成果を出したい

メリット

  • 専門性を極めることで、代替が効かない貴重な人材になれる
  • 年齢を重ねるほど経験値が蓄積され、市場価値が高まる可能性
  • 自分のペースで研究や開発に集中できる

デメリット・注意点

  • 専門分野が時代遅れになるリスク(継続的な学習が必要)
  • 組織によっては給与の上限が見えやすい
  • 孤独な作業になりがちで、組織内での影響力が限定的

マネジメントの道

特徴

  • チームやプロジェクトを統括し、組織全体の成果を最大化する役割
  • 部下の育成、予算管理、経営層との調整など、幅広い業務
  • 研究開発部門長、プロジェクトマネージャー、CTO(最高技術責任者)などへのキャリアパス

向いている人

  • 人と関わることが好きで、チームの成長に喜びを感じる
  • 全体を俯瞰し、戦略的に物事を進められる
  • コミュニケーション能力が高く、調整役として力を発揮できる
  • 組織の方向性を決める立場に魅力を感じる

メリット

  • 組織内での影響力が大きく、経営に関わる機会が増える
  • 給与水準が上がりやすく、キャリアの選択肢が広がる
  • チーム全体の成果を通じて、より大きな達成感を得られる

デメリット・注意点

  • 専門的な実務から離れるため、技術的なスキルが鈍る可能性
  • 人間関係の調整や評価など、ストレスフルな場面が増える
  • 長時間労働や責任の重さが増す

決断のタイミングはいつ? 判断基準とステップ

自己分析:どちらが自分に合っているか

以下の質問に答えてみましょう。

  1. 何に喜びを感じるか?
    • 自分の研究成果や技術的な成功 → スペシャリスト向き
    • チームの成長や組織の成功 → マネジメント向き
  2. 5年後、10年後の自分は何をしているか?
    • 最先端の技術を追求し、専門家として認められている → スペシャリスト
    • 部門や会社を率いて、事業を成長させている → マネジメント
  3. 日々の業務で何にストレスを感じるか?
    • 会議や調整業務が苦痛 → スペシャリスト向き
    • 単調な実験作業に飽きを感じる → マネジメント向き

決断のタイミング

早すぎる決断は不要 20代のうちからどちらかに決める必要はありません。まずは専門性を磨き、基礎を固めることが大切です。

30代前半が検討期間 30〜33歳頃から、両方の経験を積みながら自分の適性を見極める時期です。小規模なチームリーダーやプロジェクトマネージャーを経験してみることで、マネジメントの向き不向きが分かります。

35歳前後が一つの決断時期 組織の人事制度や自分のキャリアプランを考慮し、35歳前後で方向性を定めるのが現実的です。ただし、これは「最後の決断」ではありません。

40代以降も軌道修正は可能 マネジメントを経験した後にスペシャリストに戻る、あるいはその逆も可能です。柔軟なキャリア設計を心がけましょう。

第三の道:ハイブリッド型キャリア

実は、スペシャリストとマネジメントの二者択一だけが答えではありません。

プレイングマネージャーという選択肢

自分も研究開発の最前線に立ちながら、チームをまとめる「プレイングマネージャー」という役割があります。小規模なチームや、技術力が直接評価される環境では、この形態が非常に有効です。

複数の専門性を持つT型・π型人材

一つの専門分野を深く持ちながら(縦軸)、マネジメントスキルやビジネススキルなど複数の横軸を広げる「T型人材」「π型人材」も、現代のキャリアとして注目されています。

転職という選択肢も視野に入れる

今の組織で選択肢が限られている場合

  • 専門職制度が整っていない企業では、マネジメント以外のキャリアパスが見えにくい
  • 逆に、フラットな組織ではマネジメント経験を積むポジションが少ない

このような場合、転職によって自分の理想とするキャリアを実現できる環境を探すことも有効な選択肢です。

ミドル・ハイクラスの転職市場

35歳前後の研究職は、転職市場において即戦力として高く評価される年齢層です。特に以下のような人材は引く手あまたです。

  • 専門性が高く、論文や特許の実績がある
  • プロジェクトマネジメント経験があり、チームを率いた実績がある
  • 複数の企業や研究機関での経験があり、視野が広い

オルソリンクサポートでは、化学・メディカル・消費財・IT領域を中心に、ミドル・ハイクラス人材の転職支援を専門としています。一人ひとりの価値観やキャリアプランに寄り添い、ご家族の想いも含めた丁寧なカウンセリングを通じて、本当に納得できる転職をサポートいたします。

まとめ:「壁」ではなく「選択の機会」と捉える

研究職の「35歳の壁」は、決して乗り越えられない壁ではありません。むしろ、自分のキャリアを主体的に選択できる貴重な機会と捉えるべきです。

大切なポイント

  1. 自分の価値観を明確にする:何に喜びを感じ、どう働きたいかを見つめ直す
  2. 両方を経験してから決める:可能であれば、スペシャリストとマネジメントの両方を経験する
  3. 決断は柔軟に:一度決めたら終わりではなく、状況に応じて軌道修正できる
  4. 環境を変えることも選択肢:今の組織で実現できない場合は、転職も視野に入れる

あなたのキャリアは、あなた自身が決めるものです。35歳という節目を、制約ではなく可能性として捉え、自分らしい働き方を実現していきましょう。


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