COLUMN

デジタルヘルス・スタートアップへの転職:医療従事者の知見はどこまで通用するか?

2026.01.05

はじめに

医療DX、遠隔医療、AI診断、ヘルスケアアプリ。近年、医療とテクノロジーの融合が急速に進んでいます。その中心にいるのが「デジタルヘルス・スタートアップ」です。

医師、看護師、薬剤師、MR、臨床検査技師など、医療従事者の中には「自分の専門知識を活かして、もっと大きなインパクトを生み出したい」「医療現場の課題を解決するプロダクトを作りたい」と考える方が増えています。しかし同時に、こんな不安も抱えているのではないでしょうか。

  • 「医療の知識はあるけど、ビジネスの経験がない」
  • 「スタートアップの世界で自分は通用するのか?」
  • 「安定した環境を離れて、本当に大丈夫なのか?」

本記事では、デジタルヘルス・スタートアップへの転職を考える医療従事者に向けて、どのような知見やスキルが通用し、何を新たに身につける必要があるのかを詳しく解説します。医療の専門性とビジネスマインドを融合させることで、次世代の医療を創るキャリアが待っています。


デジタルヘルス市場の急成長と可能性

デジタルヘルスとは?

デジタルヘルスとは、デジタル技術を活用して医療・健康管理の質を向上させる分野を指します。具体的には以下のような領域があります。

  • 遠隔医療・オンライン診療:地域医療格差の解消、通院負担の軽減
  • 健康管理アプリ・ウェアラブルデバイス:日常的な健康データの可視化と予防医療
  • AI診断支援:画像診断や疾患予測の精度向上
  • 電子カルテ・医療DXソリューション:医療機関の業務効率化
  • 医薬品・治療法開発の効率化:創薬AIやデジタルバイオマーカー
  • メンタルヘルステック:心理支援やストレス管理のデジタル化

市場規模と成長性

世界のデジタルヘルス市場は、2026年には約70兆円規模に達すると予測されています。日本でも政府が医療DXを推進し、規制緩和が進んだことで、多くのスタートアップが誕生しています。

特にコロナ禍以降、遠隔医療やヘルスケアアプリの需要は急拡大し、投資額も増加傾向にあります。医療従事者にとって、この成長市場に参入するチャンスは今まさに訪れているのです。


医療従事者がスタートアップで求められる理由

現場の課題を理解している強み

スタートアップが直面する最大の課題は、**「本当に使われるプロダクトを作れるか」**です。医療現場を知らないエンジニアやビジネスパーソンだけでは、現場のニーズを正確に捉えることはできません。

医療従事者は、日々の業務の中で「この作業は非効率だ」「患者さんがこんなことに困っている」といった生の課題を肌で感じています。この現場感覚こそが、スタートアップにとって最も価値のある資産なのです。

医療の専門性がプロダクト開発を加速させる

デジタルヘルス・スタートアップでは、プロダクト開発の各フェーズで医療の専門知識が必要になります。

  • 企画段階:どの医療課題を解決すべきか、ターゲットユーザーは誰か
  • 開発段階:医療安全性や倫理的配慮をどう担保するか
  • 検証段階:臨床的に意味のあるデータをどう収集するか
  • 営業・導入段階:医療機関や医療従事者にどう訴求するか

医療従事者がチームにいることで、これらのプロセスが格段にスムーズになり、開発スピードと精度が向上します。


通用するスキルと知見

医療従事者がデジタルヘルス・スタートアップで活かせるスキルは、想像以上に多岐にわたります。

臨床現場での経験

患者対応の経験は、カスタマーサクセスやユーザー体験設計において非常に有効です。患者さんの気持ちや行動パターンを理解しているからこそ、使いやすいプロダクトを作ることができます。

また、チーム医療での協働経験は、多職種が協力するスタートアップ環境でも活きてきます。

医療プロセスの理解

診療の流れ、検査・投薬のプロセス、カルテの記載方法など、医療業務の一連の流れを理解していることは、業務効率化ツールやDXソリューションを開発する上で不可欠です。

規制・コンプライアンスの知識

医療業界は、薬機法、個人情報保護法、医療法など、複雑な規制の下で運営されています。これらの規制を理解し、コンプライアンスを担保しながらプロダクトを設計できる人材は、スタートアップにとって貴重です。

医療従事者ネットワーク

医師会、学会、病院関係者など、医療従事者が持つネットワークは、プロダクトの検証やパートナーシップ構築において大きなアドバンテージになります。


スタートアップで新たに必要になるスキル

一方で、医療現場とスタートアップでは文化や求められるスキルが大きく異なります。以下のスキルは、転職後に新たに習得する必要があります。

ビジネス思考とROI意識

医療現場では「患者さんのため」が最優先ですが、スタートアップでは**「ビジネスとして成立するか」**という視点が不可欠です。

  • どうやって収益を上げるのか(ビジネスモデル)
  • 投資に対してどれだけのリターンがあるのか(ROI)
  • 市場規模はどれくらいか(TAM・SAM・SOM)

こうしたビジネスの基礎知識を学ぶことで、医療の専門性とビジネスの視点を融合させることができます。

スピード感とアジャイル文化への適応

大病院や大手製薬企業では、意思決定に時間がかかることが一般的です。しかしスタートアップでは、スピードが命です。

  • 仮説を立てて素早く検証する(リーンスタートアップ)
  • 完璧を求めず、まず動いてみる(Done is better than perfect)
  • 失敗を恐れず、学びに変える(Fail Fast)

このスピード感とアジャイルな文化に適応できるかが、スタートアップで活躍できるかの分かれ目になります。

デジタルリテラシー

医療従事者の中には、ITツールやデータ分析に苦手意識を持つ方もいるかもしれません。しかしデジタルヘルス・スタートアップでは、デジタルツールを使いこなすことが前提となります。

  • クラウドツール(Slack、Notion、Google Workspaceなど)
  • プロジェクト管理ツール(Asana、Trelloなど)
  • データ分析の基礎(Excel、Google Analytics、SQLの基本など)

完璧である必要はありませんが、学び続ける姿勢が重要です。

不確実性への耐性

スタートアップは、明日どうなるかわからない不確実な環境です。資金調達の状況、事業戦略の転換、組織体制の変化など、変化が日常茶飯事です。

安定を求める方には厳しい環境ですが、逆に変化を楽しめる方、挑戦をワクワクできる方にとっては、最高の成長の場となります。


医療従事者がスタートアップで活躍できる職種

デジタルヘルス・スタートアップでは、医療従事者がさまざまな職種で活躍しています。

メディカルアドバイザー・臨床顧問

プロダクト開発や事業戦略に対して、医学的・臨床的な助言を行う役割です。

  • 医療安全性の監修
  • エビデンスベースでのプロダクト設計
  • 臨床試験やパイロットスタディの設計支援

医師や薬剤師など、高度な専門性を持つ方に適しています。

プロダクトマネージャー

医療の知見とビジネス思考を融合させ、プロダクトの企画・開発・改善を統括する役割です。

  • ユーザーニーズの調査と仮説構築
  • 開発チームとのコミュニケーション
  • KPI設定と効果測定

医療現場の課題を理解し、それをプロダクトに落とし込める力が求められます。

カスタマーサクセス・営業

医療機関や医療従事者に対して、プロダクトの導入支援や活用促進を行う役割です。

  • 導入前の課題ヒアリングと提案
  • 導入後のオンボーディング支援
  • ユーザーフィードバックの収集と改善提案

医療従事者との信頼関係を築きやすく、現場の言葉で話せることが大きな強みになります。

事業開発・パートナーシップ担当

医療機関、製薬企業、保険会社などとの協業や提携を推進する役割です。

  • アライアンス先の開拓
  • 共同研究や実証実験の企画
  • 契約交渉とプロジェクト推進

医療業界のネットワークと、ビジネス交渉力の両方が求められます。


転職を成功させるための準備

デジタルヘルス・スタートアップへの転職を成功させるためには、事前の準備が重要です。

ビジネスの基礎知識を学ぶ

  • オンライン講座:Udemy、Courseraなどでビジネスの基礎を学ぶ
  • 書籍:『リーン・スタートアップ』『ビジネスモデル・ジェネレーション』など
  • MBA・ビジネススクール:本格的に学びたい方には社会人MBAもおすすめ

スタートアップの文化を理解する

  • イベント参加:スタートアップのピッチイベントやミートアップに参加
  • インタビュー記事を読む:創業者や従業員のインタビューから文化を知る
  • 副業やインターン:いきなりフルコミットせず、まず関わってみる

自分の市場価値を客観視する

  • キャリア相談:転職エージェントやキャリアコーチに相談
  • スキルの棚卸し:自分の強みと弱みを明確にする
  • ポートフォリオ作成:医療現場での実績や取り組みを整理する

デジタルヘルス・スタートアップ転職のメリット

1. 社会的インパクトの大きい仕事
一人の患者さんを救うだけでなく、プロダクトを通じて何千、何万人の医療を変えることができます。

2. 高い成長性と将来性
デジタルヘルス市場は急成長中。事業が成功すれば、大きなキャリアアップとリターンが期待できます。

3. 裁量と自由度の高さ
組織がフラットで、若手でも大きな裁量を持って仕事ができます。

4. スキルの多様化
医療知識だけでなく、ビジネス、マーケティング、データ分析など、多様なスキルを習得できます。

5. ストックオプションの可能性
スタートアップではストックオプション(株式報酬)が付与されることがあり、会社の成長とともに大きなリターンが得られる可能性があります。

6. 柔軟な働き方
リモートワーク、フレックスタイム制など、柔軟な働き方ができる企業が多い。


デジタルヘルス・スタートアップ転職のデメリット

1. 給与水準の不安定性
大病院や大手製薬企業と比較すると、初年度の年収は下がる可能性があります。特にアーリーステージのスタートアップでは、資金調達状況によって給与が変動することも。

2. 事業リスク
スタートアップの多くは数年以内に倒産または事業撤退します。安定性は低く、将来の不確実性が高い。

3. 福利厚生の薄さ
大企業と比べると、福利厚生や退職金制度が整っていないことが多い。

4. 長時間労働の可能性
創業初期は特に、長時間労働や休日出勤が求められることがあります。

5. キャリアパスの不透明さ
組織が小さく、明確なキャリアパスが描きにくい場合があります。

6. 医療現場への復帰が難しくなる
一度臨床を離れると、医療従事者として現場に戻るハードルが上がります。


こんな人に向いている

  • 医療現場の課題を解決したいという強い想いがある人
  • スピード感のある環境で、自ら考え行動できる人
  • 不確実性を楽しめる、チャレンジ精神旺盛な人
  • 医療の専門性を活かしながら、ビジネススキルも身につけたい人
  • 社会的インパクトの大きい仕事がしたい人
  • 柔軟な働き方や裁量の大きさを求める人

逆に、安定性や高給与を最優先する方、変化を好まない方には、スタートアップは向いていないかもしれません。


まとめ:医療の知見とビジネスマインドの融合が鍵

デジタルヘルス・スタートアップへの転職において、医療従事者の知見は確実に通用します。それどころか、医療現場の課題を深く理解しているからこそ、本当に価値のあるプロダクトを生み出すことができるのです。

しかし同時に、ビジネス思考、スピード感、デジタルリテラシー、不確実性への耐性といった新たなスキルを身につける必要があります。医療の専門性とビジネスマインドを融合させることで、次世代の医療を創る中核人材として活躍できるでしょう。

転職は大きな決断ですが、準備と覚悟を持って臨めば、医療従事者としてのキャリアに新たな可能性が開けます。あなたの医療の知見が、何千人、何万人の未来を変える力になるかもしれません。


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株式会社オルソリンクサポートは、医療・ヘルスケア業界に特化した人材コンサルティングファームとして、医療従事者のキャリアチェンジを支援しています。

デジタルヘルス・スタートアップへの転職は、通常の転職とは異なる視点が必要です。私たちは、医療業界とスタートアップ業界の両方に精通したコンサルタントが、あなたの専門性を最大限に活かせるキャリアパスをご提案します。

  • 個別カウンセリング:あなたの価値観やキャリアビジョンを丁寧にヒアリング
  • 企業とのマッチング:医療従事者を求めるスタートアップとの最適なマッチング
  • 面接対策:スタートアップ特有の面接対策とアピールポイントの整理
  • 転職後フォロー:入社後の定着支援まで一気通貫でサポート

医療の知見を活かして、新しい挑戦をしたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。一人ひとりの想いに寄り添い、本当に納得できるキャリアを共に創り上げていきます。

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